〇〇人間。

毎度、ちくわです。

急に暑くなってきました。
いいですね、僕は寒いくらいなら汗かいていたいタイプなので暑くなるのは歓迎です。
今日もつめた~い缶コーヒーを購入し、湯煎して汗をかきながら飲みましたよ。
ああ、早く夏が来ないかな。
その前の梅雨が憂鬱ですけれどね。

読んだ本の感想書きます。

『コンビニ人間』 著 村田沙耶加

この本の感想を書くにあたり、色々思うところがありました。
正直に書くと自分の薄っぺらさと向き合わなければならないような気がして、どうにも気が重たかったです。

でもね、そんなの今さらですよ。

自分のような浅はかな人間が見栄を張ったところで建設的とは思えません。
こういうときはおっぴろげた方がいっそ清々しいはず。
自分の言葉で、自分の感想を綴っていきましょう。

まず、僕は読書するにあたり、エンターテインメント性を求めています。
山あり谷ありのストーリーで、胸のわくわくするようなイベントが控えていて、涙で視界が滲むような結末を期待しているのです。
読書するときいつもこんな高望みしているわけではありませんが、無意識に望んでいることを白状しておきましょう。

そこでこのコンビニ人間。

エンターテインメント性をあまり感じませんでした。
読んでいて胸の躍る瞬間はなかったです。
でもね、胸に突き刺さるものはあったんですよ。
たま~に思い出してその場でうずくまり、「ぎゃっ」とうめき声をあげたくなるようなやるせないものが。

この小説は主人公視点のお話です。
初めから終わりまで、ずっと主人公の目で世界を覗いた構成となっております。
主人公はコンビニで働くことを生きがいとしている女性で、レジ打ち、接客、品出し、すべてが完璧。
コンビニ店員に相応しい外見を保つよう頭の先からつま先まで気を配り、休日だろうと関係なく四六時中コンビニのことを考えています。
知人と会うときはコンビニで身につけた営業スマイルで話を合わし、コンビニを主軸に置いて人間関係の構築を考える。
人生のすべてをコンビニに捧げており、コンビニのために生まれてきた人間。
それが主人公です。
要はこの主人公、コンビニの天才なんですよね。

上記の説明、いかがでしょうか。
なにか歪なものを感じませんか。
僕の文章力はさておき、得体のしれない気持ち悪さがありませんか。
この本を読んでいると、終始その気持ち悪さを感じることができます。
しかしこの気持ち悪さこそ本書に必要不可欠なものであり、主人公と周囲にいる人間の溝や戸惑いを表現するのに大切な要素なのです。

さて。
読んでいてもやっとした気分にしてくれる本書ですが、僕が特にもやっとしたのは中盤に出てきた白羽さんという人間に対してです。
この白羽さん、とにかくサイテー。
自己中で、口やかましくて、金にだらしない。
本書の中で本当にひとつも良いところが出てこないのです。

しかもこの白羽さん、世間が自身に対して「普通」を強要してくることに憤りを感じるくせに、自分の保身のためだったらあっさり主人公に「普通」を強要しちゃうのです。
いやもう本当に見事なまでのダメっぷりでした。

でもね、僕が最も感情移入してしまったのがこの白羽さんなんですよ。
なんて言いますか、読んでいて経歴が他人事とは思えなかったのです。
読んでいて「うわー分かるー」と共感してしまう箇所が多数。
たま~に思い出して「ぎゃっ」とうめき声をあげたくなるくらいには自分と重ねてしまいました。
それは作者の意図していたことではないでしょうけれど、白羽さんというキャラクターが僕の胸に突き刺さったわけです。
いやあもうほんと鏡を見ているようで気分が悪くなりました。

僕はしばらくコンビニ人間を読むことはないでしょう。
白羽さんの言動を見ていると、とてもやるせなくなるからです。
もう少し人間的に成長して、自分に対して自信が持てるようになったら本書を再読してみたいと思います。
そのときは、白羽さんというキャラクターや主人公の考え方について、今回とは違う感想を抱けるようになっているかもしれません。

でもそれって、社会的にどんな立場の人間なんだろう?

特別じゃない。

毎度、ちくわです。

なぜか今さらELLEGARDENにハマっております。
本当になぜか自分でもわかりません。
元々、英語の歌は意味が理解できないので敬遠しがちだったのですが、ここ一週間エルレばかり聞いております。
細美さんかっこいいよ細美さん。
Space Sonicサイコー。

さて。
昔ほど音楽を聴かない僕ですが、以前は毎週新譜を確認してたくさん音楽を聴いていました。
友達からCD借りたりお金もないのに好きなアーティストの新譜買ったり、本当にあのころが懐かしい。
そこで、今回は自称音楽好きだった僕がおススメする、ちくわさん的『三大マスミサイル』について語りつくしていこうと思います。

はい、そこのあなた。
『?』という表情を浮かべない。
マスミサイルってなんだ? とか言わない。
いやでもね、気持ちは分かりますよ。
だって、マスミサイルを知っている人は僕の周りでもかなりレア、めちゃくちゃ少数です。

だから手始めに、簡単なマスミサイルの紹介をしておきましょう。
正式名称はザ・マスミサイル、直球で胸に突き刺さる日本語パンクロックでボーカルよっくんのハスキーな歌声と熱いパフォーマンスが魅力のライブバンドです。
おそらく、僕が人生で最も金と時間を費やしたバンドで、ライブには何度も足を運びました。
彼らのライブDVD『シブクアのシロクマ』のホーム画面にはノリノリで大口開けて騒いでいる僕がガッツリ映っているので、興味がありなおかつヒマだという人は探してみてください。
まあ、このDVD自体がすでに流通していないんですけどね。

それでは人生の最もつらい時期を励ましてくれたちくわさん的『三大マスミサイル』の発表です。
あと、各曲の紹介文につべのURLを引っ付けておくので、少しでも興味がある方は聞いてみてください。

いってみよ!

1マスミサイル
『雑種』 https://www.youtube.com/watch?v=QmC2NN44gy4

個人的マスミサイルのアンコール曲と言えばこの曲です。
どんなにライブで疲れ果てていてもこの曲が流れればそんなの関係ねえ!
全身鳥肌が立ち、魂が震えて「うおーー!!」と叫び始めます。

潰れかけた喉からしゃがれ声を上げコールアンドレスポンスをやりきる。
雑種が終わるころには、昔、公園で日が暮れるまで遊び続けたような心地よい脱力感を得ることができ、やりきったー! という謎の達成感が生まれます。
ライブを楽しかったー! また遊びに来よう! そう実感させてくれる名曲、それが雑種です。

あとうまく説明できないのですが、なんか歌詞が尊いんですよね。
とてもシンプルなのに、雑種の犬の孤高さ、孤独さ、みじめさ、が見え隠れして、胸がぎゅっと締め付けられます。

勢いのあるメロディーなのに祭りの終わりのような哀愁も併せ持つ雑種こそ、『三大マスミサイル』に相応しいでしょう。

2マスミサイル
『仲間のうた』https://www.youtube.com/watch?v=WnSKwwbkzCg

ちくわさんの人生で最も突き刺さった歌詞を有する名曲、それが仲間のうたです。
いやもうほんとね、ギターソロの後の部分がたまらんのですよ。

『つらい恋も 伝説に残る失恋も
つらい友情も 空前絶後の裏切りも
その人に出会わなかった生活より ずっとよかった』

もうここ! ここの歌詞! ここが本当にドツボ!
失恋したあとここを聞くと涙止まりません。
あなたに会えてよかったよ! って失恋相手に電話かけたくなる謎の衝動を覚えます。
気持ち悪いんで電話かけませんけどね。

本当に好きすぎてスコアブックとギターを買い深夜に練習するという黒歴史を作ってくれた仲間のうたこそ『三大マスミサイル』に欠かせないのです。

3マスミサイル
『教科書』 https://www.youtube.com/watch?v=b5fyHOaaBdk (『今まで何度も』もオマケで)

やはりマスミサイルの話をするときに教科書は外せないでしょう。
マスミサイルと言えば教科書、教科書と言えばマスミサイル。
これはもう揺るぎない事実なのです。

この曲はもうとにかく人生の応援歌。
ぼっち、泣き虫、弱虫、陰キャ、……etcetc。
あらゆる弱者の弱さを認め、受け入れてくれる名曲です。
教科書はこの曲を聞いている人の至らなさを、無条件で認めてくれます。

弱っているときに聞くと危険です。
この曲のない生活に戻れなくなります。
「お前はこのままでいいんだよ!!!」って肩つかまれて激しく揺さぶられながら励まされる気持ちになります。
自分のような自己評価の低い人間の欲しい言葉が詰まっているんです。
こんなもん、辛いときに頼るなっていう方が無理ですよ。
いやもう、本当に教科書は卑怯。

昔カラオケで歌っているとき、声を張りすぎて思いっきり首をつってしまった教科書こそ、『三大マスミサイル』に含まれるべきです。

いかがでしたでしょうか、今回の『三大マスミサイル』は。
ほとんどの人が意味不明でしたね。
しかし、マスっ子(マスミサイルのファンのこと)からすれば、ミーハー以外何物でもない内容なのです。
「こんなの初期マスミサイルの有名な3曲を並べただけじゃねーか!」とツッコミを入れられる恐れすらあります。
ですがまあ、マスミサイルのファンなんてはぐれメタルより遭遇率が少ないので、だぶん大丈夫でしょう。

今回、このブログを書くにあたり、数年ぶりにマスミサイルのことを検索したのですが、なんと先月、6年ぶりにフルアルバムをリリースしていたそうです。
正直、まだ活動していたのか! という驚きの方が強いのですが、これも何かの縁でしょう。
久しぶりにCDを購入し、マスっ子として活動を再開しようかなと思うちくわでした。

デイ・ドリーム・ビリーバー

毎度、ちくわです。

唐突ですが、僕は映像作品をほとんど見ません。
アニメも映画もドラマも、まったくと言っていいほど見ないのです。
昔、映画好きだった友達の影響で、二日に一回くらいの割合で映画をレンタルして見ていた時期があったのですが、その反動で映像作品が苦手になってしまいました。
世の中にはジャンルを問わず面白い映像作品がたくさんあるので、我ながら人生損しているなあ~と思うのですが、苦手なものは苦手なので仕方ありません。

ところが、そんな映像作品が苦手な僕でも、最近気になっているアニメがあるのです。
どうして気になっているのかというと、そのアニメの原作が僕の大好きな漫画だからです。
まあ、ありきたりな理由ですよね。
でも、世の中ってそういうもんですよ、きっと。

というわけで、その漫画がこちら。

『イエスタデイをうたって』 冬目 景

いやあ来ましたね、イエスタデイをうたって。
マジでこの作品がアニメ化されるなんて夢にも思いませんでしたよ。
連載終了したのが2015年、アニメ化決定したのが2019年。
連載終了してから実に4年もの月日が流れていたのです。
まあ、連載期間は18年という超長期連載だったわけですけどね。

さて。
この漫画の主要人物は以下の四人です。

マイペース無責任男、リクオ。
真面目系非恋愛女子、榀子。
エキセントリック自己中女、ハル。
元中二病生意気小僧、浪くん。

以上の四人が恋愛感情を交えつつ、絶妙な距離感でつかず離れずを繰り返す青春群像劇となっております。
それにしてもこの四人、本当に距離感が絶妙なんですよ。

今の人間関係を壊したくない。
でも、自分の気持ちを抑えられない。
たとえ、相手に迷惑だと思われても。

この奇跡のようなバランスを18年間保ち続けてきたわけです。
そりゃ榀子も干上がりますし浪くんだって我慢の限界を迎えるってなもんですよ。

あと僕がこの作品を読んで痛感したことは、レンアイは非常に面倒くさいということです。
だって奇人変人である彼らが、レンアイをすることによって人格に異常をきたし、相手のことを思いやり、大人な対応をするようになるんですよ?

リクオが誠実であろうとするし、ハルが相手のことを思いやろうとする。
あのリクオやハルがですよ!?
リクオやハルをここまで狂わせるレンアイってやつは、やはりとんでもない狂気なのです。

というか真面目な話、人を好きになるって深刻な精神異常だと思うんですよね。
だって、感情の動きがすごく不条理ですから。

作中において、ハルはリクオに対し「スイッチ」が入ってしまいます。
それはもう些細なきっかけで。
当然ハル自身どうして「スイッチ」が入ってしまったのか全然分からないのです。
なぜリクオを好きになってしまったのか、ハルにも説明できないのです。

しかしハルは理解しています、自分がどうしようもなくリクオのことを好きだということを。
ひねくれた性格のハルがその事実を認め、半周遅れのレースに参加しようとする。
その健気さがもうたまらんのです。

理屈に合っていないから忘れたい、可能性が低いから諦めたい。

ダメージを抑えるための防御策を却下するなんて、マジでレンアイは呪いみたいなもんです。
ハル頑張れ! ワイは応援してるぞ!!

まあレンアイの面倒くさそうな部分をあれこれと書きましたが、この作品は読後感がすごくいいのです。
こんなドロドロしたストーリーなのに後腐れ感ゼロ。
もう乾燥機に入れたあとのタオルみたいにサラッサラ。
特にそう思うのが最終回。
えっこれでもう終わり? っという淡白ぶり。
こっちはもっと後日譚が見たいねん! と思ってもしっかり物語が締められているので文句が言えません。

ファンはこの結末を見るために18年巻待ち続けました。
当然この僕もです。
しかし、今なら一気に読むことができます。
巻数は11巻と少なめなので、未読の方がいらっしゃったらこの機会に読んでみてはいかがでしょうか。

思考の言語化のなんと難しいことか。

毎度、ちくわです。
洗濯物溜まっています。
明日着る服ありません。
コインランドリー使うの面倒です。
二日連続同じ服きてもいいよね。
いいよって言ってくれ!

読んだ本の感想書きます。

『20歳の自分に受けさせたい文章講義 』 著 古賀史健

星海社新書です。
普段、僕は物語性のある小説ばかり読んでいるのですが、ビジネス書っぽい星海社新書を読むのは珍しい。
ひょっとして、人生初かも?
内容はタイトルそのまま、文章の書き方について書かれています。

私ちくわは、これまでの人生でそこそこ文章を書いてきました。
しかし、それらはすべて独学。
完全に趣味の範囲だったので、誰かに教えてもらう機会がありませんでした。
そんな折、たまたま本書を知る機会があったので試しに読んでみたのですが、もう目から鱗でした。
「ああ、なるほどね」、とメチャクチャ納得しました。

本書は文章を書くのに役立つ様々なノウハウが書かれています。
その中で僕が特に感心したのは、冒頭にあるガイダンスでした。
そこでは、僕が文章を書く上で困っている状況を、見事に言語化していたのです。
この箇所を読んだだけですごい収穫だと思いましたね。
自分が感じていた違和感の正体はこれだったのか、と拍手を送りたい気分になりました。

もちろん文章を書く実用的な技術も書かれています。
全編で分かりやすい例えが用いられていて非常に読み易い。
各稿の最後にまとめが記されているので、あとで読み返すのにも便利です。
この本で書かれていることを実践できれば、それだけで人前に出しても恥ずかしくないレベルの文章が書けるようになるでしょう。
ただまあ、読み終わったからといってすぐ実践できるわけもなく、僕も早くそういうレベルに達したいなあと思います。

最後に、筆者は本書のまとめでこう言っています。

『書きながら大いに勉強になったし、たくさんの気づきを得ることができた。これは「書いた人」にだけ与えられる特権である。』

本書を読んでみれば分かるのですが、書くことは相手に意志を伝えたり情報を残したりする以外にも意味があります。
ぶっちゃけ、僕もその『「書いた人」にだけ与えられる特権』というものが欲しかったのですが、今回はその特権の恩恵に預かることはできませんでした。

知識を得るのとその知識を実践するのは意味が全く違う。
これが今回僕が得ることのできた教訓でしょうかねえ。

鶏が先か、卵が先か。

「ここは?」

気が付くと、見覚えのない場所に立っていた。
周囲には何も見当たらず、上を見れば限りのない青空が広がっている。
地面には白いモヤが立ち込めていて、硬いような柔らかいような不思議な感触が足の裏から伝わってきた。
場所を特定するような目印は皆無で、見渡す限りなにもない。
今立っている空間がどれくらい広いのか、全く想像がつかなかった。

同じ場所にいてもしょうがないと思ったので、当てもなく歩き始めた。
一歩二歩と進み、自分の足取りの軽さに驚く。
不思議な感触の地面のおかげか、足腰にかかる負担が全くない。
歳のせいで足や膝が思うように動かなくなっていたが、これならばいくらでも歩いていられるような気がした。

どれくらい時間が経っただろうか。
かなりの距離を歩いた。
依然景色に変化はなく、歩き続けることしかできなかった。
自分がどこにいて、このあと家に帰れるのかどうか分からなかったが、心は落ち着いていてとても穏やかだった。
誰もいない夜の街を独り占めして歩いているような、妙な高揚感を覚えた。

「久しぶり」

突然、後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、そこには古い知り合いである田辺が立っていた。

「お前もこっちに来たのか」

田辺は再会を楽しんでいるような口ぶりだった。
癖のある白髪、目元に浮かぶ深い皺。
全てが、最後に会ったときのままだ。

「もう二度と会うことはないと思っていたよ」

私は少し迷ってから、正直な気持ちを口にした。

「だろうな」

田辺はそう言うとにやりと笑って黙り込んだ。
余計な主張ばかり繰り返す、田辺らしくない。
田辺は昔から、私に対して一言多い男だった。

「なにか、謝ることはないのか」

二人して黙っていると、先に口を開けたのは田辺だった。
早く話を進めたいのか、それとも単純に黙っていることが苦手なのか。
おそらく後者だろう。

「私が間違っていた、すまない」

私は自分の過ちを認め、頭を下げた。
私たちが顔を合わせて会話していること自体が、私の間違いを証明していたからだ。

「分かればいいんだ」

田辺は腕組みをし、満足そうにゆっくりと頷いた。

「間違いは誰にでもあるさ。この経験を今後の人生で活かしてくれ」

「今後の人生?」

私は謝罪するために下げた頭を元の位置に戻した。
今の田辺の発言はおかしい。
きっと安易に偉ぶろうとして、軽率な失言してしまったのだろう。
私は、そのミスをすかさず指摘することにした。

「今の発言はおかしい。私はこの経験を活かせないはずだ。だって」

田辺を正面から見据えてこう言った。

「亡くなったはずの田辺と対面しているということは、私も死んでしまったということだ。死んでしまったのだから、この経験を人生に活かすことはできない」

「ちっ、そんなことは言われなくても分かってる」

面倒な奴だな、という不快感を田辺は隠そうとしなかった。

私と田辺は、幼いころから友人同士だった。
私たちは大人になると互いに学者になり、田辺は伝承や文化を研究する民俗学で、私はロボットに関係する情報科学で、それぞれ高い評価を受けた。

私たちは専門分野が違っていたが、二人で会うとき、よく議論をした。
議論の内容は、「日本が有人宇宙船を月面に送ったときのメリットデメリット」というものから、「枝豆がなかったときのビールに合うつまみについて」など、非常に多岐に渡った。

そして、最後に会ったとき私たちが話した議題が、「死後の世界の有無について」だった。
私は死後の世界を否定し、田辺は肯定した。
二人の主張は平行線を辿り、結論が出る前に、田辺は病気で死んでしまった。
私はついさっきまで死後の世界なんてないと考えていたが、田辺と会ったことで、考えを改めなければならなくなった。

「そんなに落ち込むな。まあ、自分が死んでしまってショックなのは分かるが」

「ショックなど受けていない。少し、考え事をしていただけだ」

死後の世界についての議論で、私は間違えていて、田辺は合っていた。
今後、田辺は私に対して優位に立とうとするだろう。
そのことを思うと憂鬱になってきた。

「そんな顔するな。久しぶりに会えたんだ、今日はとことん語り合おう」

「……そうだな」

悩みのタネである田辺が嬉しそうに笑っていたので、先のことなどどうでもよくなって、私もつられて笑ってしまった。

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

毎度、ちくわです。

四月になりました。
暖かくなってきたなあと思いきや本日は若干肌寒い感じ、外に出るときの恰好に困ってしまいます。
まあ明日はまた暖かくなっているでしょう。
なんだかんだで春ですからね。

そう、春。
ただ今、春真っただ中。
というわけで、読んだ本の感想書きます。

『重力ピエロ』  伊坂幸太郎 著

現在、伊坂ブームが再燃中のちくわさん。
「春が二階から落ちてきた」というフレーズでお馴染みの当作品を読み返してみました。

重力ピエロは簡単に言うと家族の物語。
主人公の泉水は遺伝子関係の会社で働くサラリーマン、魅力的な外見をした弟の春と、地味で平凡だが高い能力を持っている父がいる。
母は既に病没していたが、家族関係は良好でそれなりの日常を送っていた。
しかし、呪われた過去のせいで自己否定を続ける弟、最強の敵との闘いで徐々に体力を奪われていく父、不穏なものが少しずつ家族を蝕んでいく。
そんな折、泉水の勤めている会社で放火事件が起き、春や父と面白半分で考察を始めてみたのだが……というお話。

この話、とにかくテーマがとても重い。
性犯罪、少年法、遺伝子問題、etcetc……。
どんだけ読者をふるいに掛けるんですか。

しかし、いざ読み始めてみるとスラスラページが捲れます。
ユーモアや軽口の応酬が面白くて、雰囲気が全く暗くないのです。
むしろ軽快で痛快、読む人に一切苦痛を感じさせません。
このテーマにしてこの読みやすさ、これぞ伊坂節でしょう。

全編にちりばめられた伏線の回収も見事。
登場人物の行動に矛盾がなく、謎がすべて解消されます。
途中で、「えっ、これってどういうこと?」「大丈夫……なの?」と不安に思っていても、読み終われば「そういうことだったのか!」と声が出てしまうでしょう。
最後まで読めばかならず感動させてもらえる。
重力ピエロは、そういう小説なのです。

この作品を読んだ担当編集者は、「なんだ、小説まだまだいけるじゃん!」と叫んだという逸話がありますが、いやはや全くその通り。
仮に小説を否定する人がいたとしたら、この小説を読んでから否定してもらいたいですね。

あと、この小説にはヒーローが登場します。
そのヒーローに特殊な能力はありません。
むしろ今にも死んでしまいそうな、瀕死のヒーローです。
しかしそのヒーローは難しいことなど一切せず、言葉だけで泉水と春を救ってしまいます。

不思議な能力がなくても人は救われる。

その描写を完璧に表現しきったというだけで、この物語は傑作と呼ばれるに値する小説なのです。

史上最大の戦い(終)。

物事には何事にも終わりがあります。
例えば、大日本プロレスのリーグ戦『一騎当千』を予想している当ブログにも終わりが来るわけですよ、寂しいですね。
しかし、そんなこと言っていたらいつまでたっても予想が終わりません。
このままでは先に『一騎当千』が終わってしまいます。
名残惜しいですがささっさと始めましょう。

……それにしても、リーグ戦半分消化しているのにまだ予想が終わっていないとか、我ながら無計画ですなあ。

さて。
A、B、Cと紹介してきましたので今回はDブロックです。
Dブロックはシングルを見たい選手が多いですからね、ヒジョーに楽しみ。
ドーンといってみよう。

Dブロック

野村卓矢 (大日本プロレス)
中之上靖文(大日本プロレス)
菊田一美 (大日本プロレス)
青木優也 (大日本プロレス)
ジェイク・リー(全日本プロレス)

いやあ精悍な顔ぶれですね。
ジェイク、青木は男前で、野村は女性に可愛い顔立ち。
中之上は良くも悪くも普通ですが、菊田は……極悪。
いやあもう、皆さんとても精悍です。
では各選手の詳細を。

野村卓矢

出ました! 人を蹴るのが大好きな変態、ノムタク!
彼はいいですよ、笑顔で人を蹴り飛ばしますからね。
初めて見たときの衝撃は今でも忘れられません、先輩レスラーにガチビンタかましてましたからね。
大日本プロレスでは唯一無二の総合格闘技系レスラー、各種キック、サブミッション、スープレックスが得意で一瞬で試合を極めます。
ところがまだまだ若手なので勝ちパターンが決まっていません。
これ! というフィニッシュホールドが確立されれば一気にトップ戦線へ食い込むんですけれどね。

中之上靖文

プロレス界一良い人。
どれくらい良い人かと言いますと、後楽園で握手を求めたとき、「僕なんかでいいんですか?」ってメッチャペコペコされました。
あなただからいいんです!
大日本に入団してから明らかに体が厚くなり、所属選手で数少ない関本、岡林に引けを取らない肉体の持ち主。
エルボーやラリアットは『剛腕』小島聡を彷彿とさせる逸品です。
スーパーヘビー級でありながらトペ・コンヒーロ、スワンダイブなどもこなせる器用な選手。
必殺のダイビングエルボーさえ決まれば誰も返せません、中之上、今年こそ優勝だ!!!
(青木にはエルボー返されたけど)

菊田一美

ちょっと前まで打撃が得意なだけのレスラーだったのですが、二年くらい前に剃髪、黒道着と衝撃的な変貌を遂げ、河上隆一とのタッグ『飛艶』で大躍進、なんと全日本プロレスのアジアタッグまで巻きました。
一美という可愛らしい名前なのに目つきの鋭い強面レスラー。
ハッキリ言って、リングの外で出会ったらビビります。
空手経験者だけあって掌底や蹴りで試合を組み立てることが多く、相手の意識を刈り取るハイキックはまさに一撃必殺。
勝ちパターンはできているので、あとはどうやってそこまで持っていくかが今課題でしょう。

青木優也

Dブロックで最も後輩、にもかかわらず堂々たるジュニアチャンピオン。
ジュニアの選手らしく軽快な飛び技、クイックな攻めが得意で、一瞬の丸め込みはしばしばヘビー級から金星を挙げております。
意志の強そうな太い眉は性格を表しているのでしょうか、とにかく負けん気が強い。
先輩相手でも一歩も引かず、リングの中央を絶対に譲りません。
その情熱的なファイトが観客の支持を受け、若手ながらジュニアチャンピオン獲得、『一騎当千』の抜擢、という結果を出しております。
体格的に勝ち抜くのが厳しいリーグ戦ですが、ヘビー級相手に得意のタイガースープレックスが決まれば決勝リーグ進出も夢ではありません。

ジェイク・リー

王道『全日本プロレス』からの刺客、手足がすらりとした非常に色気のあるレスラー。
上記の青木は昭和のイケメン顔なのですが、ジェイクは今風のイケメン。
というかスタイルがヤバい、メッチャ顔が小さくて足長いです。
その長い脚から繰り出されるえげつない膝は破壊力抜群、ホームの全日本では数々の大物食い、先輩越えを果たしてきました。
既に至宝『三冠ベルト』にも挑戦した実績があり、間違いなく今後の全日本プロレスを背負っていく逸材。
メジャー選手にもかかわらずリスクを背負ってインディーへ参戦する貪欲さ、嫌いではありません。

以上、Dブロックの選手紹介でした。
比較的若い選手が多いDブロック、その中から予選を通過するのはズバリ!

本命 中之上靖文

対抗 ジェイク・リー

注目 野村卓矢

本命の中之上、前回の一騎当千でブレイクする兆しがあったものの結局は尻すぼみ。
穏やか過ぎる性格が足を引っ張ているのは明らかですが、いい加減テッペンを取らなくてはダメ。
お願い頑張って、大好きな選手なんだから!

対抗のシェイクは業界内での「格」が非常に高い選手。
なんてったってメジャー団体、全日本プロレスの秘蔵っ子ですからね。
もちろんそれに相応しい実力も備えているので、予選突破しても不思議ではありません。

注目の野村、もうかれこれ数年間は野村に注目しっぱなしです。
野村の試合は本当に面白くて痛快。
一試合でも多く野村の試合を見たい! だから決勝リーグに上がってきてね。

というわけでようやく20人参加、四ブロック制の予想が終わりました。
いやあ無計画らしくグダグダでしたね。
しかしそれも仕方ありません、なんてったって無計画なのですから。

さて。
肝心の『一騎当千』優勝者予想ですが、……無計画なので次回のおまけの一回で書くことに決めました。
いやあ、色々文章書いてたら疲れちゃったんですよね。
これから去年の『一騎当千』デスマッチサバイバー、竹田VS佐久田の試合を見ようと思うので、暇なときにでも続き書いてみます。

そんじゃまた。

蟷螂のAX。

当ブログ、今までプロレスのお話しかしておりませんでした。
しかし、たまには小説のお話でもしましょう。
そこそこ本を読んでいるんですよ、僕。

『AX』 著者 伊坂幸太郎

人気作家、伊坂幸太郎の殺し屋シリーズ第三弾。
一作目が『グラスホッパー』でバッタ、二作目が『マリアビートル』でテントウムシ。
そして三作目が『AX』、タイトルに虫が関係なくなっているのかと思いきや、ブログタイトルで少し触れている通り、蟷螂の斧、つまりカマキリが関わっているというわけですね。

殺し屋『兜』は業界で屈指の腕利き。
仲介業者から依頼を受け殺人を犯す一方、妻や子供が家におり、文房具メーカーの営業職という社会的なパーソナルを持っている。
死ぬことよりも妻の怒りが怖い恐妻家で、息子に呆れられつつ愛情と畏怖の対象である妻のご機嫌を伺い続ける毎日。
幸せな家庭を手に入れたことで殺人稼業に嫌気がさし、足を洗いたいと考えるが依頼を断り切れず、殺人と日常生活を両立させるために悪戦苦闘する、というストーリー。

この作品の見どころは、淡々と人を殺すくせに夜中物を食べる音で妻が起きてしまうのではないかと本気で怯えている兜のギャップでしょう。
この兜の思考がとてもユニークなのです。
常人には理解し難過ぎて、いわゆる「天然」として目に映ります。
殺人と比べれば寝ている妻を起こしてしまうことなんてどうでもいいでしょ! お前、奥さんどんだけ怖いんだよ! とツッコミたくなるのです。

しかし僕がここで色々言ったところで意味はありません。
きっと兜には、「君は全く分かっちゃいないな」と一笑に伏されるたけでしょう。
それくらい、希代の殺し屋にとって妻は絶対的な存在なのです。

終盤で兜と妻の馴れ初めについて簡単に触れられており、そこを読むことでまあなんとかギリギリ、兜の態度にも共感できるようになります。

いや、やっぱムリだ。

あとこの作品、殺し屋シリーズの三作品目となっておりますが、世界観こそ共有しているもののストーリーが別物なので単体でも楽しめます。
共通の登場人物がいるので以前の作品を読んでいる方がより楽しめるてしょうけれど、読んでいなくても無問題です。
なんか、こういう作品を超えた演出はとても伊坂っぽいなあと思います。

内容が内容だけにリアルの生活で活かせる教訓めいたものは少ないのてすが、僕がこの作品から学んだことは、『最悪、殺し屋になってもいいけれど、結婚して妻を持つのは嫌だな』ということですかね。

安全にお使いいただくためのご注意。

これは昔、僕が邪悪な魔王を倒すため勇者として旅をしていたときの話です。

魔王討伐の朝、目覚まし時計をセットし忘れていた僕は、集合時間に遅れてしまいました。

「ちょっと勇者、また遅刻?」

現場に到着すると、血の滴るメイスを構えた僧侶に文句を言われました。
どうやら、僕を待っている間に魔物と戦闘があったようです。

「ごめんごめん、聖剣が見つからなくて。寝る前、玄関に置いておいたんだけどなあ」

理由を正直に伝えると、怒った僧侶が戦闘中に回復してくれないかもしれないので、僕は嘘を言いました。

「いつも言ってるでしょ。道具袋の中は整理整頓しとけって。次遅れたら王様に言うからね」

「分かってるって。気を付けるよ」

王様の名前を出すのは卑怯だなあ、と思いました。

「これで全員揃いましたね。それでは行きましょうか」

ノートパソコンをスリープモードに切り替えながら賢者が言いました。
おそらく、仮想通貨の売買をしていたのでしょう。
様々な副収入を得ている賢者は、お使いイベントに出てくる町の大富豪よりお金持ちでした。

「行くでゴワス」

食べかけの薬草を一気に飲み込んだあと、戦士は続いて毒消し草を食べ始めました。
肥満体の戦士は常に何か食べていないと動いてくれません。
薬草関連はいざというときないと困るから、食欲のために食べないでほしいなあと常々思っていました。

「よし! いこう! いこうぜ! みんな!」

勇者である僕の一声で、パーティーは魔王城へ乗り込みました。

魔王城攻略は想像を絶するムリゲーでした。
なんと魔王城には、宿屋も、回復ポイントも、セーブポイントすらなかったのです。

「ここはおいどんに任せて先にいくでゴワス!」

道中、戦士が漫画などで見かける例の場面を再現しました。
とても美しい自己犠牲の精神ですが、単純に歩くのを面倒がっていると僕には分かりました。
こういうとき、戦士という身分は気軽でいいなあとうらやましく思います。
しかし、非正規である戦士では将来不安で仕方ありません。
やはり、正規である勇者でないと親も安心してくれないですからね。

仲間の脱落もありましたが、僕たちはネットの攻略情報を頼りに、なんとか魔王のもとへ辿りつけました。

相対すると魔王はこう言いました。

「もし、わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう」

僕はノーと答えました。
当たり前です。
僕はみんなの笑顔と幸せのため長い旅をしてきました。
ここで魔王を倒すのが勇者の使命でしょうが!

「よろしい。ならば戦争だ」

なぜか急に少佐口調になった魔王との最終決戦が始まりました。

最終決戦は熾烈を極めました。
僕は勇者にもかかわらず戦闘の最初で死んでしまったので、僧侶に生き返らせてもらったときにはすでに終盤にさしかかっていました。

「今です勇者! あのアイテムを!」

賢者が偉そうに指示してきました。
ちなみのあのアイテムとは、HPの少なくなった魔王を封印することができる、『破邪の壺』のことです。

「うん、分かった!」

いくら金持ちでも999,999Gでカンストするクセに賢者はいつも偉そうだ、と不満を覚えましたが、魔王を封印するための呪文は賢者にしか唱えられません。
良い返事をしたあと、僕は道具袋を開きました。

(あれ? 『破邪の壺』がない。……あっ、そうだ!)

以前カジノでボロ負けしたとき、スロットのコイン代を捻出するため皆に内緒でよろず屋に売っていたことをすっかり忘れていました。

(クソっ! イベントアイテムなのに、なんで店で売れちゃうんだよ)

システムに文句を言っても世界は平和になりません。
すでにもう魔王は瀕死で、封印の準備は整っているのです。
なにか代わりになるものはないかと、僕は道具袋の中をひっくり返しました。

「えーっと、うーんと。賢者、これで何とかして!」

「へっ、なんですこれ?」

「USB」

それは、先日ネットで購入したUSBメモリでした。
大事なデータを入れたばかりだったので、肌身離さず持っていたのです。

「いや、そんなの無理でしょ!」

「大丈夫! まだ空き容量あるから!」

「そういう問題じゃないんです!」

僕たちは『いいえ』を選択する限りずっと同じテキストがループする選択肢のように言い争いを続けましたが、株の銘柄を少しでも早くチェックしたい賢者が先に折れました。

「どうなっても知りませんからね!」

賢者は魔王封印のための超高等呪文を詠唱し始めました。
賢者の魔力は言葉に変換され、無防備な魔王の聴覚を刺激します。
すると、魔王の脳内に侵入した呪文は内側から魔王を無力化し、聖なる器に封印することができるのです。

封印する直前、僕はUSBメモリの取扱説明書を見直しました。
安全に使うための注意事項の欄には、『水で濡らさないこと』、『子供のそばに置かないこと』、など書かれていましたが、『魔王を封印しないこと』とは書かれていませんでした。

イケる!

僕は確信を得ました。

『ウ、オ、オオ……』

魔王の体が霧となり、すごい勢いでUSBメモリに吸い込まれていきます。
勢いよく魔王を吸い込んでいくUSBメモリは、さながら吸引力の落ちない掃除機のようでした。

「これで……勝ったと思うなよ……。邪な……ものたちが存在する限り……、私は……何度でも蘇るのだ……」

安っぽい負け惜しみを言い終えると魔王はUSBメモリにスッポリ納まりました。
USBメモリの容量は4GBだったので、世界を恐怖に陥れた魔王は4GB以下の存在なのだと思いました。

「よし、みんな帰ろう!」

勝鬨を上げ、僕たちは旅立ちの村へ帰ることにしました。

「勇者どん、起きているでゴワスか」

スタッフロールの最中立ち寄った村で宿を取っていると、深夜に戦士がやってきました。

「あのう、例の、そのう、前言っていたことでゴワスが」

寝ている最中起こされたので何のことか思い出すのに時間がかかりましたが、夜に人目を忍んでやってくる戦士を見て分かりました。

「ああ、これでしょ」

僕は道具袋からUSBメモリを取り出して戦士に渡しました。
以前、戦士には僕の秘蔵ムフフデータを渡す約束をしており、僕はそのためにUSBデータを購入していたのです。

「もう寝ていい?」

USBメモリを渡すと僕はさっさとドアを閉めました。

「おお! 感謝します勇者さま!」

閉じるドアの隙間から、感激のあまりキャラ崩壊を起こしている戦士の姿が見えました。

翌朝、戦士の部屋から戦士の惨殺死体が見つかりました。

「勇者、これを見てください」

現場を検証し終わった賢者は、僕を部屋に入れると机の上にあったパソコンまで連れて行きました。

「これはUSB?」

パソコンには、昨晩僕が渡したUSBメモリが刺さっていました。

「ええ、そうです。どうやら戦士は、このUSBに封印されていた魔王のデータを解凍してしまったようなんです。どうしてこんな愚かなことを……。なにか、心あたりはありますか?」

「シラナイヨ」

戦士が死んでしまった責任を負いたくない僕は、当然なにも知らないふりをしました。

「そうですか。まあそれはいいでしょう。問題は、解凍される前、魔王がデータ化されていたということなんです。あの状態の魔王は、メールに添付されればどこでも行けることができるし、コピーすればいくらでも増えることができます。ひょっとしたら、戦士は殺される前にそういうことをしていたかもしれない」

「キットダイジョウブダヨ」

僕はこれ以上ないというくらい目を泳がせながら、旅立ちの村に帰ったあと幼馴染と結婚することを考えていました。

「そうですか……。そうですよね、ええ」

日経平均株価が気になる賢者は、そう言い残すと自分の部屋に戻っていきました。

その日以降、世界各地で、戦士と同じ惨殺死体が発見されるようになりました。

もし、世界中で何か良くないことが流行り始めたら、誰かが開いてはいけないファイルを開いてしまったのかもしれませんね。

史上最大の戦い(後編)。

大日本プロレスのリーグ戦、『一騎当千』の開幕が3月3日。
そして本日3月20日。

リーグ戦が始まってから早2週間以上経過しています。

いやー、すっかり忘れていましたね。
リーグ戦の結果を予想しようと思っている間にリーグ戦が始まっていたなんて、こんなこと誰が予測できるでしょう。
不測の事態と言わざるを得ません。
当然、すでに数試合消化されており、試合結果を欠かさずチェックしている僕はすべての勝敗を把握しているのですが、そんなの関係ねえッ! の精神で予想を続けます。

プロレスはカウント2.99からだ!!!

前回はBブロックの紹介だったので今回はCブロックです。
それでは、エントリーされた怪物たちご覧あれ。

Cブロック

岡林裕二 (大日本プロレス)
浜 亮太 (大日本プロレス)
神谷英慶 (大日本プロレス)
火野裕士 (プロレスリングZERO1)
クワイエット・ストーム (フリー)

いやあ、マジでこれはとんでもないことですよ。
最早説明不要、正真正銘怪物たちの集い。
全ブロック中一番怪物が集まったブロックじゃないでしょうか。
破壊力抜群過ぎて誰も通過できそうにない、兵どもが夢の跡になってしまいそうなCブロックを通過するのは誰だ!?

岡林裕二

分厚い背中、太い腕、そしてポイントポイントで発せられる謎の言葉、『ピッサリ』を操る土佐が産んだ怪物。
途方もない怪力でその腕力はマット界随一、基本性能が高いのでチョップやボディスラムなどの威力がほかの選手と桁違いです。
ただ相手を投げる、それだけで会場がどよめき観客の心を掴みにします。
迫力ある動き、感情豊かな試合運び、見た目も「プロレスラー」そのもの、人気、実力、雰囲気、すべて兼ね備えたいごっそう(土佐弁で『快男児』の意)。
キャリア的にも全盛期に差し掛かっており、もちろん、今回の優勝候補です。

浜 亮太

日本人史上歴代最重量レスラー。
その体重たるや驚くことなかれ、なんと225キロ。
見た目がもう怪物。
スピードこそありませんが、ただのタックルやボディプレスが浜ちゃんにかかればすべて必殺技となります。
無論、真正面から立ち向かえる選手など皆無で、その存在自体が反則的。
だって、ただ相手にのしかかるだけでスリーカウント入っちゃいますからね。
持ち上げること自体が難しいので、投げ技を得意とするレスラーにとって紛れもない天敵、重いということが攻撃にも防御にも作用しています。
古巣、レッスルワンで師匠である武藤敬司と再会を果たしやる気も十分、当然、今回の優勝候補です。

神谷英慶

業界で随一のぶちかましを誇るストロングBJの有望株。
年々体の厚みを増していき、各種タックルは試合を決められる技まで昇華しました。
ちょっと前まで若手というイメージがあったのですが、今ではリング上の貫禄も十分、自己主張もできるようになりバックヤードのコメントも魅力的です。
空気を読まずいたる場所でベルト挑戦をアピールするそのメンタルは、すでに怪物クラスでしょう。
他団体、全日本プロレスでのリーグ戦『チャンピオン・カーニバル』にも参戦決定、そこで経験を積めば一気に化けそうな気配があります。
得意技のバックドロップは頭から垂直に落とす全日っぽいタイプなので、要所で決まれば誰も返せないでしょう。
心身ともに一気に成長する可能性を秘めた神谷こそ、満場一致で、今回の優勝候補です。

火野裕士

プロレスリングZERO1の怪物、Fucking火野裕士の電撃参戦です。
はち切れんばかりに鍛え上げられた肉体、相手の攻撃をわざと受けるふてぶてしさ、これぞプロレスという激しい試合を量産してくれる頼もしいレスラーです。
個人的な意見なのですが、現在、プロレス界で一番のチョップを放つのは火野だと思っています。
それくらい、火野の上半身は半端ないのです。
チョップの他に各種スープレックスも得意で、持ち前の怪力はどんな相手でも問答無用で投げ切ってしまいます。
去年は所属している団体 ZERO1で、シングル、タッグ、両リーグで優勝、チャンピオンベルトも保持していました。
ZERO1を完全制覇した火野こそ、間違いなく、今回の優勝候補です。

クワイエット・ストーム

腕回り50センチでおなじみのファンキー外国人。
先日、プロレスリングNOAHを退団しフリー選手として『一騎当千』に参戦です。
ぶっちゃけ、NOAHの退団は契約を切られてしまったということなのですが、むしろNOAHを退団したことで、現在のストームは活き活きしているように見えます。
メディアでの仕事、他団体への進出、そして『一騎当千』への参加、NOAHから解き放たれたことで、逆に活躍の場が広がっていますからね。
腕回り50センチという怪物級の上腕から繰り出される50cm腕ラリアット(ガチの技名)はまさに一撃必殺。
史上初の外国人レスラーによる『一騎当千』制覇へ驀進しているストームこそ、異論なしで、今回の優勝候補です。

以上で選手紹介終了なのですが……、上記の通りこのブロックはマジで怪物だらけなんですよ。
どうしてこれだけ力自慢が偏っているのか。
真っ向勝負を信条とする選手ばかりです。
当然予想は困難を極めたのですが、それでも主観的かつ独りよがりな予想をしてみました。
結果、はいドン。

本命 火野裕士

対抗 岡林裕二

注目 クワイエット・ストーム

本命、火野裕士。
最近の火野はマジでヤバいんですよね。
あんな爆発しそうな鍛え上げられた肉体、業界広しといえど火野くらいじゃないでしょうか。
マッスル的に一歩リードしているZERO1の怪物が本命です。

対抗、岡林裕二。
火野と同等、もしくはそれ以上の肉体を誇る岡林ですが、一月に行われたシングルで、火野に負けてしまっています。
まあ、2人はwユージとしてタッグを組みお互いの実力を認め合っているライバルなので、どちらが勝ってもおかしくないというのが本音。
あくまで、直近の勝敗を参考にした結果、岡林は対抗です。

注目、クワイエット・ストーム。
判官贔屓というわけではないのですが、NOAHを退団してからストームの会場人気は非常に高いと思うんですよね。
業界全体から追い風をビュービュー受けている状態なので、今回の『一騎当千』でも大暴れしてくれるでしょう。

以上で、ドキッ! 怪物だらけのCブロック大予想、は終了です。
う~ん、今回の予想は本当に難しかった。
マジで誰がリーグ予選突破してもおかしくないんですよね。
そしてそのまま『一騎当千』を優勝しちゃいそうな。
それくらい偏ったブロックでした、この組は。

次回はおそらく最終回のDブロック。
このブロックは好きな選手が多いから予想が今から楽しみだなあ。