「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

毎度、ちくわです。

四月になりました。
暖かくなってきたなあと思いきや本日は若干肌寒い感じ、外に出るときの恰好に困ってしまいます。
まあ明日はまた暖かくなっているでしょう。
なんだかんだで春ですからね。

そう、春。
ただ今、春真っただ中。
というわけで、読んだ本の感想書きます。

『重力ピエロ』  伊坂幸太郎 著

現在、伊坂ブームが再燃中のちくわさん。
「春が二階から落ちてきた」というフレーズでお馴染みの当作品を読み返してみました。

重力ピエロは簡単に言うと家族の物語。
主人公の泉水は遺伝子関係の会社で働くサラリーマン、魅力的な外見をした弟の春と、地味で平凡だが高い能力を持っている父がいる。
母は既に病没していたが、家族関係は良好でそれなりの日常を送っていた。
しかし、呪われた過去のせいで自己否定を続ける弟、最強の敵との闘いで徐々に体力を奪われていく父、不穏なものが少しずつ家族を蝕んでいく。
そんな折、泉水の勤めている会社で放火事件が起き、春や父と面白半分で考察を始めてみたのだが……というお話。

この話、とにかくテーマがとても重い。
性犯罪、少年法、遺伝子問題、etcetc……。
どんだけ読者をふるいに掛けるんですか。

しかし、いざ読み始めてみるとスラスラページが捲れます。
ユーモアや軽口の応酬が面白くて、雰囲気が全く暗くないのです。
むしろ軽快で痛快、読む人に一切苦痛を感じさせません。
このテーマにしてこの読みやすさ、これぞ伊坂節でしょう。

全編にちりばめられた伏線の回収も見事。
登場人物の行動に矛盾がなく、謎がすべて解消されます。
途中で、「えっ、これってどういうこと?」「大丈夫……なの?」と不安に思っていても、読み終われば「そういうことだったのか!」と声が出てしまうでしょう。
最後まで読めばかならず感動させてもらえる。
重力ピエロは、そういう小説なのです。

この作品を読んだ担当編集者は、「なんだ、小説まだまだいけるじゃん!」と叫んだという逸話がありますが、いやはや全くその通り。
仮に小説を否定する人がいたとしたら、この小説を読んでから否定してもらいたいですね。

あと、この小説にはヒーローが登場します。
そのヒーローに特殊な能力はありません。
むしろ今にも死んでしまいそうな、瀕死のヒーローです。
しかしそのヒーローは難しいことなど一切せず、言葉だけで泉水と春を救ってしまいます。

不思議な能力がなくても人は救われる。

その描写を完璧に表現しきったというだけで、この物語は傑作と呼ばれるに値する小説なのです。

投稿者: ちくわさん(三日坊主)

ちくわとして生を受け幾星霜。 そろそろ練り物でいることにも飽きたので別のモノに生まれ変わりたいです。

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